海運市況は低位推移のまま年を越しそうです。タンカー市況は比較的好調ですが、バルカーはドン底。コンテナーもメガ級の新造船が多く投入されることで船腹過剰となり芳しくありません。荷物、アライアンス、サイズを含めて業界調整が必要となりましょう。昔、100万トンタンカーがまことしやかに語られ日韓造船所も態勢を整えましたが、色々な事情（主に環境問題）で建造は実現しませんでした。輸送単価が低減できるとて大きなことが良いとは限りません。コンテナーも同様ではないでしょうか？
従来、タンカーとドライの市況は歩調が合うことは少なく、時にはバルカーにpump roomを装備してタンカーに改造するような時代もありましたが一過性でした。それにしても、タンカーだけが好調なのは、原油が安くなった分が運賃安定に寄与しているのでしょうか？需給バランスが良好なのでしょうか？規制が厳しく老朽船の退役が予測以上に早いのでしょうか？海運市況はvolatileだけに、今は浮いても、いつ沈むか判りません。

バルカーは、ケープサイズの市況が指標になります。矢張り鉄鉱石輸入量の多い中国の経済減速感が影響しているようです。先日、香港に出向き、中国経済、就中、宝山製鉄所事情に明るい御仁に面談しました。彼によると、中国向け鉄鉱石は安値になったこともあって、金額的には減っているが量的には激減しているわけでもない。中国西域はこれからも発展するとかで、決して悲観的ではありません。船腹過剰感はありますが、日本においては3年間ぐらいの受注残を抱える一方で、その後のバルカー受注はありませんし、韓国／中国もバルカー受注は止まっているようです。気になるのは、需給バランスを無視した、投機筋の活発な動きです。従来船主であった会社などが、市況低迷を背景に、今がチャンスと新造／中古船をまとめ買いしたりする、彼らに運航能力があるだけに、あるいはそれが無くてもブローカーを使って、低運賃で稼働しているのです。cash-flow negativeながら、投資先にadditional call をせず稼働している様子ですが、昔あったように、船を laid-upするほどの状況ではないようです。これら投機筋は「出口」を3年先程度に設定しているようで、動機は必ずしも健康的ではありません。

TPPも大筋同意され、日中韓も仲良くなりそうです。アメリカも悪くありません。BRICS (Brazil, Russia, India, China, South Africa）経済も インド／フィリピンは好調の様子。只、名付け親のGOLDMAN SACHSがBRICSの将来性に見切りをつけFundを閉鎖したことが気がかりです。 EUは3重苦、4重苦に苛まれていますが早期復帰が望まれます。日本とEU間でEPA交渉が始まっています。日本にとって、TPPのEU版です。実現に向かって歩を進めて貰いたいものです。中国/韓国もTPPに参加すればよろしい。先進国も後進国も仲良く、そして関税を撤廃或いは低減して自由貿易が実現できれば、海上荷動きが活発化します。

余談ですが先日、岡山に行きました。山陽新聞社が発行している「さん太タイムズ」というのがあり。海を渡る病院―「済生丸」の活躍を紹介していました。岡山、広島など4県33島を対象に検診が主な役割で、診察・治療を行います。180GRTだそうです。日本の余剰内航船を改造し、かかる病院船にして、多島国であるフィリピン、インドネシアに無償供与しては如何なものでしょうか？搭載する医療機器は血液検査、レントゲン、歯科関連、出産関連、そして薬剤。以前マルコス時代にフィリピン向け実現しかかった経緯もあります。