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コラム
2017 Vol. 3 PDF 版



春です。トランプがどうあれ、英国がどうあれ、北朝鮮がどうあれ、何がどうあれ、海運市況は、特にドライ市況は上向きに推移しています。2016年の新造船受注量が、20数年ぶりの低水準であった一方で、世界の海上荷動きは漸増していることの反映でしょう。中古船売買は盛んですが、船が要らなくなった人から要る人へ移動するだけで船腹量が増えるわけではありません。環境問題などで解体船も増えていることは結構なことです。船腹量と荷動きのバランスが良い方向に推移しつつあるようです。株式市場、為替、金利は多少の変化があっても、日々心を悩ますことはありません。我々海事クラスター主導で金融市況を動かすことは出来ません。今年は世界の政治、経済においてかなりの変動が予測され、かかる変動とその結果には、良かれ悪しかれ海運市況も影響を受ける故、ウオッチし続けましょう。それにしても、アメリカによるミサイル攻撃には驚きました。日本から遠方のこととは云え、また北朝鮮を意識したものとは云え、厚木米軍基地に近い我が家にミサイルが飛来する日があるかもしれません。くわばら、くわばら。



<閑話休題>

クルージング事業は世界的に活況を呈しているようです。ここで言うクルージングとは乗客3,000人-5,000人を対象にした大型豪華クルージングで、日本人にも人気上昇中です。現在、世界の発注残は80隻余あり、今年から10年間に亘り、引き渡しされる予定です。日本での新規建造はありません。三菱重工はこの種豪華客船建造で大赤字を出しました。一般商船を出来るだけ短期間で、出来るだけ数多く建造してきた日本の造船業の歴史、文化のなかに豪華客船を建造出来るDNAはありません。80余隻の中では中国の造船所が2隻受注しているようですが、かかる豪華客船が中国で問題なく建造できるか大いに疑問です。日本のみならず、東洋文化圏で豪華客船を建造出来るDNAはないでしょう。一般商船のデザインコンセプトとは全く違い、独特の「感性」、「文化」が必要で、欧米の造船所、専業オペレーターは大いに先行してノウハウを確立しているのです。日本の専業造船所も同様、今後とも手を出さない方がよろしい。ギリシャ船主(クルージングオペレーター)が日本より中古の貨客船を買船しますが、有姿でギリシャまで一航海して現地でプレハブした新造居住区に取り換えし改造するのです。彼らが要るのは頑丈な船体とエンジンだけなので、日本での改造はしません。以前、日本の某大手が中古客船を豪華客船に改造した実例がありますが、大赤字を出しました。造船不況下であったとしても、この種豪華客船の新造、改造とも手を出さないことです。

地中海クルージングとカリブ海クルージングを経験しました。寄港地の設備は整備され、朝起きれば違う国におり、各寄港地では何種類ものエクスカーションが準備され、バスで内陸の観光地を巡り、夜は豪華なディナー、その後は一流の芸人によるショー、或いはカジノ。朝と昼の食事は豊富なバイキング。一週間のクルージングで充実した時間を過ごせます。決して暇を弄ぶことはありません。これまで培った文化と経験から欧米大手のオペレーションは確立、成熟しており、彼らの競争原理の下で新規の参入は難しいと思われます。日本を含む東洋人がオペレーターとして起業することは不可能でしょう。

クルージングで訪日する外国人観光客は増えております。日本が出来ることはクルーズ寄港施設を整備、進展させることでしょう。港でいえば、500米の岸壁と1ヘクタールの埠頭用地、水深15米が理想。日本の寄港地からの日帰りエクスカーションの立案。欧米のオペレーターは日本発着のクルージングを始めようとしています。中国発着も稼働し始めます。

日本の旅行代理店も、欧米のオペレーターと組んでクルージング パックを売り始めました。地中海、カリブ海の一週間クルージングで往復航空運賃込みは50万円以下です。皆さんは公私とも仕事で多忙を極めておられましょうが、今まで奥さまに「ツケ」があるとせば、「ツケ」を払うつもりで、御夫婦でお出かけになっては如何でしょうか?帰国後暫くは夫婦円満となること必至。未だ、中国人や韓国人の乗客を余り見かけません。

野田 著


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