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コラム
2005 Vol. 5 PDF 版


買取オプション行使撲滅させる方法は無いものか ... ? 船主/銀行より照会がありました。

折角それなりにご馳走を食べて造血した積りが、オプション蚊が飛んできてグサリ、吸血されて何かと計画が狂い船主も銀行も敗北感あり。この蚊をたたき殺す方法はありません。事前に蚊取り線香でも炊いておかねばなりません。

買取オプション付き長期用船契約は歴史的に慣習化された契約形態で、特に日本の金融市場の優位性を海外が活用している背景があるように思えます。30年前香港が金融コストが安く、船舶管理コスト (船員コスト) が安く、一方日本が造船コスト且つ長期用船者 (オペレーター) がおる環境で、香港船主 (WW INC 等) と日本のオペレーターの間で所謂 "仕組み船" ディールが数多く仕上がりました。これが基本型で金融コスト、船舶管理コスト、造船コスト等の有利な国とか時代の変遷の中で、昨今日本は金融コストが低く為替が安定、船舶管理は船員も含め海外に外注出来、海外オペレーターが日本より高い傭船料を払う。これからも安いところ取りしたセットメニューが出てくるかも知れません。例えば本社機能を海外に移転して金融も含めて全てオフショアーと言う事もありえましょう。昨今日本の海運業もさほどに国際化している傾向を観ます。

当初の買取オプション付き長期用船契約は双方の思惑が加味された上で且つ法的に権利・義務が整備されています。これを撲滅・停止する事はできません。船主の思惑は当然然るべきキャピタルゲインを3年末に設定されて、まさかオプシオン行使はありえまいと判断したでしょうし、銀行は丸3年は一括返済して貰いたくないという思惑もあったでしょう。今回全く予期せざる海運市況の暴騰に遇い用船者にとって千歳一遇のチャンスで勝利感を経験しただけのことです。今回の事象は二度と無いでしょうが、経験・実績的には事前対策としては下記のような配慮があります。しかし契約を必要以上に複雑にしてろくな事は無いというのも又経験、実績ではあります。

  1. オプション・プライスを高めに設定する。買取りオプションは用船者にとって一方的に有利であるが、お互いの思惑の中で双方同意した経緯があります。3年末のオプション船価を乗出し簿価に設定した事例が多いが、例えばキャピタルゲインをその倍にするとか ...
  2. 買取りオプションと同時に船主の売船オプシオンも付加する。但し売船オプションの場合用船者をバイヤーとして優先権を与えること (FIRST REFUSAL) 。どちらが先にオプシオン行使するかは事前同意する事になります。
  3. 買取オプションを与えるが買取価格を事前同意せず、その時の市況表示を反映させることとする。具体的には一流ブローカー3社の平均値を取るとか ...
  4. 用船料を MINIMUIM GUARANTEED HIRE (船主にとって BREAKEVEN?LOOR RATE) とし、一定長期設定し用船者運航に任せ、FLOOR RATE 以上の儲けは双方で PROFIT SHARE する。この場合 DOWNWARD RISK は回避し UPWARD POTENTIAL は分与される。用船者よりの SA では本船運航収支 (バンカー・港費含め) 詳細レポートを受ける事になります。

如何なる用船契約も用船者側には契約を停止する与件は沢山ありますが、船主側は唯一用船料不払いだけです。これが無ければ "撲滅" は無理で、確立された契約形態の中で上記のような実績はかなりハードな事前交渉となりましょう。

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